VO2 max(最大酸素摂取量)とは?
体力は、最大限の運動をした際に体が消費できる酸素の量で測定できます。
VO2 maxとは、体重1kgあたり1分間に使用できる酸素の最大量をミリリットル単位で表したものです。
体力のある人はVO2 maxの値が高く、体力の低い人よりもより激しい運動を持続することが可能です。
研究によると、心拍数が最大心拍数の65~85%になるような強度で、週3~5回、少なくとも20分間の運動を行うことで、VO2 maxを向上させることができると報告されています(French & Long, 2012[8])。
男性アスリートのVO2maxの平均値は約3.5リットル/分、女性アスリートは約2.7リットル/分です。
VO2maxに影響する要因
有酸素運動でエネルギーを生み出す速度には、いくつかの物理的な限界があり、主に以下の要因に依存します。
1. 筋肉細胞が燃料を分解する際に酸素を利用する能力(ミトコンドリアの酸素利用効率)
2. 酸素を筋肉に運ぶ心血管系と肺の機能(心拍出量や肺活量など)
これらのさまざまな生理学的要因が組み合わさることで、VO2 maxが決定されます。
VO2 maxの理論的モデル
VO2 maxには、大きく分けて2つの理論があります。
1. ユーティライゼーション理論
•VO2 maxは、体が酸素を効率的に利用する能力によって決まる。
2. プレゼンテーション理論
•VO2 maxは、心血管系が筋肉に酸素を送る能力によって決まる。
Saltin & Rowell(1980)[3]の研究では、VO2 maxの主な制限要因は、酸素を筋肉へ供給する能力であると結論付けています。
また、Gollnickら(1972)[4]の研究では、体が利用可能な酸素を使う能力とVO2 maxの間には、強い相関が見られなかったと報告されています。
グループ別のVO2max
以下の表は、Wilmore and Costill(2005)[2]から改編したもので、さまざまなグループのVO2 max(ml / kg / min)の標準的データの詳細を示しています。
年齢別
年齢 | 男性 | 女性 |
10 – 19 | 47 – 56 | 38 – 46 |
20 – 29 | 43 – 52 | 33 – 42 |
30 – 39 | 39 – 48 | 30 – 38 |
40 – 49 | 36 – 44 | 26 – 35 |
50 – 59 | 34 – 41 | 24 – 33 |
60 – 69 | 31 – 38 | 22 – 30 |
70 – 79 | 28 – 35 | 20 – 27 |
スポーツ別
スポーツ | 年齢 | 男性 | 女性 |
野球 | 18 – 32 | 48 – 56 | 52 – 57 |
バスケットボール | 18 – 30 | 40 – 60 | 43 – 60 |
サイクリング | 18 – 26 | 62 – 74 | 47 – 57 |
カヌーイング | 22 – 28 | 55 – 67 | 48 – 52 |
アメリカンフットボール | 20 – 36 | 42 – 60 | |
器械体操 | 18 – 22 | 52 – 58 | 35 – 50 |
アイスホッケー | 10 – 30 | 50 – 63 | |
オリエンテーリング | 20 – 60 | 47 – 53 | 46 – 60 |
ボート競技 | 20 – 35 | 60 – 72 | 58 – 65 |
アルペンスキー | 18 – 30 | 57 – 68 | 50 – 55 |
ノルディックスキー | 20 – 28 | 65 – 94 | 60 – 75 |
サッカー | 22 – 28 | 54 – 64 | 50 – 60 |
スピードスケート | 18 – 24 | 56 – 73 | 44 – 55 |
水泳 | 10 – 25 | 50 – 70 | 40 – 60 |
円盤投げ | 22 – 30 | 42 – 55 | |
陸上競技ーランニング | 18 – 39 | 60 – 85 | 50 – 75 |
陸上競技ーランニング | 40 – 75 | 40 – 60 | 35 – 60 |
陸上競技ー砲丸投げ | 22 – 30 | 40 – 46 | |
バレーボール | 18 – 22 | 40 – 56 | |
ウェイトリフティング | 20 – 30 | 38 – 52 | |
レスリング | 20 – 30 | 52 – 65 |
アスリートのVO2max
以下は、女性と男性のトップアスリートのVO2maxスコアです。
VO2 max (ml/kg/min) | アスリート | 性別 | スポーツ/イベント |
96.0 | Espen Harald Bjerke | 男性 | クロスカントリースキー |
96.0 | Bjorn Daehlie | 男性 | クロスカントリースキー |
92.5 | Greg LeMond | 男性 | サイクリング |
92.0 | Matt Carpenter | 男性 | マラソンランナー |
92.0 | Tore Ruud Hofstad | 男性 | クロスカントリースキー |
91.0 | Harri Kirvesniem | 男性 | クロスカントリースキー |
88.0 | Miguel Indurain | 男性 | サイクリング |
87.4 | Marius Bakken | 男性 | 5km ランナー |
85.0 | Dave Bedford | 男性 | 10km ランナー |
85.0 | John Ngugi | 男性 | クロスカントリーランナー |
73.5 | Greta Waitz | 女性 | マラソンランナー |
71.2 | Ingrid Kristiansen | 女性 | マラソンランナー |
67.2 | Rosa Mota | 女性 | マラソンランナー |
VO2maxと年齢の関係
VO2 maxは年齢とともに低下することが知られています。
Jacksonら(1995)[5]の研究によると、VO2 maxの平均的な減少率は、男性で年間0.46 ml/kg/分(1.2%)、女性で0.54 ml/kg/分(1.7%)と報告されています。
この低下は、最大心拍数や最大拍出量(心臓が1回の拍動で送り出す血液量)の減少など、複数の生理的要因によるものと考えられます。
VO2maxとパフォーマンスの関係
VO2 maxの値だけでスポーツパフォーマンスを正確に予測することはできません。しかし、アスリートがVO2 maxでどれくらいの速度(vVO2 max)で動けるか、またその状態をどれくらい持続できるか(tlim vVO2 max)を考慮すると、より正確にパフォーマンスを評価することができます。
つまり、VO2 maxが高いだけでなく、それを最大限に活用できる能力が重要であるということです。
VO2max評価テスト
VO2 maxの推定値は、次のテストのいずれかを使用して割り出すことができます。
- 2.4 km走テスト
- Astrand Treadmill Test -トレッドミルで実行されるVO2maxテスト
- Astrand 6分間サイクルテスト-エアロバイクでのVO2maxテスト
- Blake VO2maxテスト-持久力スポーツに適しています
- Blake インクリメンタルトレッドミルプロトコルテスト-トレッドミルでのVO2maxテスト(男性および女性テスト)
- Bruce インクリメンタルトレッドミルプロトコルテスト-トレッドミルでのVO2最大テスト(男性と女性のテスト)
- Cooper VO2 maxテスト-持久力スポーツに適している
- Conconi テスト
- 臨界水泳速度-水泳選手の有酸素能力の測定
- ホームステップテスト-自宅で実施できるステップテスト
- ハーバードステップテスト-心臓血管の健康の測定
- マルチステージフィットネステストまたはブリープテスト-持久力スポーツ用のVO2maxテスト
- クイーンズカレッジステップテスト-VO2maxテスト
- ロックポートフィットネスウォーキングテスト-VO2maxテスト
- Tecumseh ステップテスト-心臓血管の健康の測定
- トレッドミルVO2maxテスト-VO2 maxテスト
- 非運動データからのVO2max-VO2maxテスト
- 1マイル(約1.6キロ)のジョギングからのVO2max
- レース結果からのVO2max(距離に対しかかった時間)
- VO2maxステップテスト
- 車椅子VO2maxテスト
VO2max – 最大心拍数(HRmax)および安静時心拍数(HRrest)を使用
Uth等の(2004)[9]による研究では、VO2maxは、他の一般的なVO2maxテストと比較して高い精度で、個人の最大心拍数(HRmax)および安静時心拍数(HRrest)から間接的に推定できることがわかりました。
それは以下によって定められます。
- VO2 max = 15 x (HRmax ÷ HRrest)
VO2max – 年齢、体重、安静時心拍数(HRrest)を使用
Rexhepi 等による(2014)[10] 16〜35歳の1500人の現役フットボール選手を対象とした研究では、年齢、体重、安静時の心拍数を使用したAstrand Bike Testの結果に基づいて次の方程式が作成されました。
- VO2 max = 3.542+ (-0.014 x 年齢) + (0.015 x 体重 [kg]) + (-0.011 x 安静時心拍数)
VO2max向上のためのトレーニング方法
以下は、作業生理学者Astrandが提案する酸素摂取能力を向上させるためのトレーニングのサンプルです。
① 最大速度で5分間走
•まず、最大速度で5分間走り、その間に走った距離を記録します。(例:1900m)
• 5分間休憩した後、その距離を20%遅いペース(6分間で走るペース)で走行します。
•30秒の休憩を挟みながら、このセットを繰り返します。
• このペースは10kmレースのペースに相当します。
② 最大速度で4分間走
•最大速度で4分間走り、距離を記録します。(例:1500m)
• 4分間休憩後、その距離を15%遅いペース(4分36秒)で走行します。
•45秒の休憩を挟みながら、繰り返します。
• このペースは5kmと10kmレースの間に近いペースです。
③ 最大努力で3分間走
•最大努力で3分間走り、距離を記録します。(例:1000m)
•走行距離を10%遅いペース(3分18秒)で走行し、60秒の休憩を挟みながら繰り返します。
• このペースは5kmレースのペースに近いです。
④ 最大努力で5分間走
•最大努力で5分間走り、距離を記録します。(例:1900m)
• 5分間休憩後、その距離を5%遅いペース(5分15秒で1900m)で走行します。
•1分30秒の休憩を挟みながら繰り返します。
• このペースは3kmレースのペースに近いです。
⑤ 最大努力で3分間走
•最大努力で3分間走り、距離を記録します。(例:1100m)
•回復した後、同じ距離を5%遅いペース(3分9秒で1100m)で走行し、1分の休憩を挟みながら繰り返します。
• このペースは3kmレースのペースに相当します。
トレーニングの実施頻度
冬期(オフシーズン)
•①・②のセッションを毎週1回ずつ実施
トラックシーズン(競技期)
•800m~ハーフマラソンのランナーは③・④・⑤を毎週1回ずつ実施
最大努力走の計測と回復の重要性
最大努力走を行う際、前回の距離を基準にして同じマークを使用することが便利に思えるかもしれません。しかし、この方法には注意が必要です。なぜなら、選手のコンディションは毎回異なり、前回の走行距離より長くなることもあれば短くなることもあるためです。そのため、過去の記録にこだわらず、その都度計測することが重要です。最大努力で走ること自体が、トレーニングの質を高める要素となります。
また、与えられた休憩時間内に心拍数が120拍/分まで回復しない場合は、次の反復走を開始する前に回復時間を延長する必要があります。これは、適切な回復を確保することで、トレーニングの質を維持するためです。
一方で、反復走の間の休憩時間は厳密に守ることが求められます。休憩時間を守ることで、適切な負荷を維持しながら効果的にVO2 maxを向上させることができます。
このトレーニングは、単なる繰り返しのランニングとは異なり、セッションごとに新鮮な刺激をもたらします。また、5つのセッションを1ヶ月以内にすべて実施することで、パフォーマンスの大幅な向上が期待できます。
高度の影響
VO2maxは高度が1600mを超えると減少し、1600mを1000m超えるごとに最大酸素摂取量は約8~11%減少します。この減少は主に最大心拍出量(心拍数と拍出量の積)の減少によるものです。 血漿量が即座に減少するため、1回拍出量が減少します。
VO2max評価
VO2 max評価は、1997 [6]と2005 [7]の両方のCooper VO2 maxの表に基づいています。
1997年のVO2 maxの標準的なデータ
女性の標準的なデータ(Heywood 1998)[6](ml/kg/min)
年齢 | 不可 | 準可 | 可 | 良 | 優 | 秀 |
13 – 19 | < 25 | 25 – 30 | 31 – 34 | 35 – 38 | 39 – 41 | > 41 |
20 – 29 | < 24 | 24 – 28 | 29 – 32 | 33 – 36 | 37 – 41 | > 41 |
30 – 39 | < 23 | 23 – 27 | 28 – 31 | 32 – 36 | 37 – 40 | > 40 |
40 – 49 | < 21 | 21- 24 | 25 – 28 | 29 – 32 | 33 – 36 | > 36 |
50 – 59 | < 20 | 20 – 22 | 23 – 26 | 27 – 31 | 32 – 35 | > 35 |
60 + | < 17 | 17 – 19 | 20 – 24 | 25 – 29 | 30 – 31 | > 31 |
男性の標準的なデータ(Heywood 1998)[6](ml/kg/min)
年齢 | 不可 | 準可 | 可 | 良 | 優 | 秀 |
13 – 19 | < 35 | 35 – 37 | 38 – 44 | 45 – 50 | 51 – 55 | > 55 |
20 – 29 | < 33 | 33 – 35 | 36 – 41 | 42 – 45 | 46 – 52 | > 52 |
30 – 39 | < 31 | 31 – 34 | 35 – 40 | 41 – 44 | 45 – 49 | > 49 |
40 – 49 | < 30 | 30 – 32 | 33 – 38 | 39 – 42 | 43 – 47 | > 48 |
50 – 59 | < 26 | 26 – 30 | 31 – 35 | 36 – 40 | 41 – 45 | > 45 |
60 + | < 20 | 20 -25 | 26 – 31 | 32 – 35 | 36 – 44 | > 44 |
2005年のVO2 maxの標準的なデータ
女性の標準的なデータ(Heywood 2006)[7](ml/kg/min)
年齢 | 不可 | 可 | 良 | 優 | 秀 |
20 – 29 | < 36 | 36 – 39 | 40 – 43 | 44 – 49 | > 49 |
30 – 39 | < 34 | 34 – 36 | 37 – 40 | 41 – 45 | > 45 |
40 – 49 | < 32 | 32 – 34 | 35 – 38 | 39 – 44 | > 44 |
50 – 59 | < 25 | 25 – 28 | 29 – 30 | 31 – 34 | > 34 |
60 – 69 | < 26 | 26 – 28 | 29 – 31 | 32 – 35 | > 35 |
70 – 79 | < 24 | 24 – 26 | 27 – 29 | 30 – 35 | > 35 |
男性の標準的なデータ(Heywood 2006)[7](ml/kg/min)
年齢 | 不可 | 可 | 良 | 優 | 秀 |
20 – 29 | < 42 | 42 – 45 | 46 – 50 | 51 – 55 | > 55 |
30 – 39 | < 41 | 41 – 43 | 44 – 47 | 48 – 53 | > 53 |
40 – 49 | < 38 | 38 – 41 | 42 – 45 | 46 – 52 | > 52 |
50 – 59 | < 35 | 35 – 37 | 38 – 42 | 43 – 49 | > 49 |
60 – 69 | < 31 | 31 – 34 | 35 – 38 | 39 – 45 | > 45 |
70 – 79 | < 28 | 28 – 30 | 31 – 35 | 36 – 41 | > 41 |
%HRmaxおよび%VO2max
トレーニング中の心拍数(HR)をもとに、VO2 maxに対する運動強度の割合を推定することが可能です。
David Swainら(1994)[1]の研究では、統計的手法を用いて、最大心拍数(%HRmax)とVO2 max(%VO2max)の関係を調査しました。その結果、両者の関係を示す回帰方程式が導き出されました。
- %HRmax = 0.64 × %VO2 max + 37
この関係は、性別、年齢、活動全体で当てはまることが示されています。
計算
以下の計算機が変換を行います。 値を入力し、パラメーター(HRmaxまたはVO2max)を選択します。
%VO2maxおよびスピード
%VO2max | スピード |
50 | とてもゆっくりなランニング |
60 | ゆっくりなランニング |
70 | 安定したランニング |
80 | ハーフマラソンスピード |
90 | 10kmを走るスピード |
95 | 5kmを走るスピード |
100 | 3kmを走るスピード |
110 | 1500mから800mを走るスピード |
VO2 max(最大酸素摂取量)の向上トレーニングについては、別の記事で詳しく紹介しているので、ぜひそちらもご参照ください。





1.SWAIN et al. (1994) Target HR for the development of CV fitness. Medicine & Science in Sports & Exercise, 26 (1), p. 112-116
2.WILMORE, J.H. and COSTILL, D.L. (2005) Physiology of Sport and Exercise. 3rd ed. Champaign, IL: Human Kinetics
3.SALTIN, B. and ROWELL, L.B. (1980) Functional adaptations to physical activity and inactivity. Federation Proceeding. 39 (5), p. 1506-1513
4.GOLLNICK, P.D. et al. (1972) Enzyme activity and fibre composition in skeletal muscle of untrained and trained men. J Appl Physiol., 33 (3), p. 312-319
5.JACKSON, A.S. et al. (1995) Changes in aerobic power of men, ages 25-70 yr. Med Sci Sports Exerc., 27 (1), p. 113-120
6.HEYWARD, V. (1998) The Physical Fitness Specialist Certification Manual, The Cooper Institute for Aerobics Research, Dallas TX, revised 1997. In: HEYWOOD, V (1998) Advance Fitness Assessment & Exercise Prescription, 3rd Ed. Leeds: Human Kinetics. p. 48
7.HEYWARD, V. (2006) The Physical Fitness Specialist Manual, The Cooper Institute for Aerobics Research, Dallas TX, revised 2005. In: HEYWOOD, V (2006) Advanced Fitness Assessment and Exercise Prescription, Fifth Edition, Champaign, IL: Human Kinetics.
8.FRENCH, J. and LONG, M. (2012) How to improve your VO2max. Athletics Weekly, November 8 2012, p.53
9.UTH, N. et al. (2004) Estimation of VO2 max from the ratio between HRmax and HRrest – the Heart Rate Ratio Method”. Eur J Appl Physiol. 91(1), p.111-115
10.REXHEPI, A. M. et al. (2014) Prediction of vo2max based on age, body mass, and resting heart rate. Human Movement. 15 (1), p. 56-59.
関連文献
・BELTRAN, L. et al. (2014) Prediction of VO2max Using Serial 400-m Running Times in Male Collegiate Soccer Players. Journal of Kinesiology and Nutrition Student Research, 2
・HAUGEN, T. A. et al. (2014) VO2max Characteristics of Elite Female Soccer Players, 1989-2007.International journal of sports physiology and performance, 9 (3), p. 515-521
・Matsuo, T. et al. (2014) Effects of a low-volume aerobic-type interval exercise on VO2max and cardiac mass. Medicine and science in sports and exercise, 46 (1), p. 42-50
参照ページ
MACKENZIE, B. (2001) VO2 max [WWW] Available from: https://www.brianmac.co.uk/VO2max.htm [Accessed 5/2/2020]