神経系
神経系は、脳と脊髄を含む中枢神経系(CNS)と、脳神経と脊髄神経を含む末梢神経系(PNS)に分けられます。脳は次の2つの領域で構成されています。
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受容体と効果器
耳、眼、筋肉などの受容器は情報(刺激)を収集します。中枢神経系はこの情報を解釈し、刺激に対する身体の反応を行う”効果器”に送り返します。ジャンプ時の脚の筋肉のストレッチや反射のように、自動的に行われる動作もあれば、疲労信号のように、脳によって解釈される動作もあります。
中枢神経系研究
長期にわたるスポーツの関与は、中枢神経系「コントロール 」の筋肉の動員とパターン形成に影響を及ぼすことが研究で示されています。
フィンランドの研究者(Eloranta 2003) [2] は、短縮性とドロップバーティカルジャンプ(DVJ)の間の脚の筋肉の協調に対するスポーツ経歴の影響を調査しました。彼らは、中枢神経系がスポーツ経験者の筋肉の発火パターンと動員パターンに影響を与えることを発見し、これらの違いは個人のスポーツの特性と、トレーニングの年数が中枢神経系に及ぼす影響に起因すると考えました。
そして、「特定のスポーツで長時間トレーニングすると、そのスポーツの要求に応じて中枢神経系が筋肉の協調運動をプログラムするようになる」とし、「中枢神経系の学習されたスキル反射は、別のタスクのパフォーマンスに干渉する。」と結論付けました。
中枢神経系トレーニングと 「機敏性」
Bompa(2005) [1] は、スポーツパフォーマンスに関連する二つの中枢神経系プロセス、「興奮」と「抑制」を特定しています。受容体から効果器に信号が伝達され、再び効果器に信号が伝達される速度は、興奮または抑制のレベルをもたらします。たとえば、短距離走のときに体をできるだけ速く動かすためには、中枢神経系を通過する信号の伝達速度もできるだけ速くする必要があります。アスリートの受容体と効果器は、速筋線維の最適な動員をもたらすために、最適に興奮していて抑制されていない状態である必要があります。
ただし、中枢神経系疲労は、特に速筋線維内では興奮の速度を遅くし、速筋線維は遅筋繊維よりもはるかに速く疲労します。したがって、Bompaは、「機敏」であることが可能である限りで、運動は行われるべきであると考えています。
相乗作用
相乗作用には、神経興奮、運動単位および筋線維の動員を促進し、抑制を低下させる一連の活性環境を筋肉発火複合体のなかに作り出すことが含まれます。プライオメトリックワークアウト(コンプレックストレーニング)の前にウェイトを持ち上げると、プライオメトリックアクティビティのパフォーマンスが向上することが示されています。しかし、どのような相乗作用も中枢神経系を疲労させるものであってはならず、そうでなければ逆効果が生じます。
ウェイトトレーニング
爆発的な力を向上させるためのウェイトトレーニングに関するBompaの哲学(Bompa 2005) [1] は、反復が重要なトレーニング変数であるこということです。彼は、1RMの90%以上の負荷で、少ない反復回数(1〜3レップ)で、スピードとパワーを高め、中枢神経系の関与を最適化する強度を開発し、セット間の回復を6分にすることを推奨しています。
これらの負荷は、より高いレベルの興奮および受容体/効果器の伝達、より多くの運動単位の動員およびより多くの神経刺激を引き起こします。これらの負荷と回復は、最大パワーと筋力発現への寄与に基づき推奨されます、また、それらが運動選手の体重に対するパワーの比率に悪影響を与える可能性のある筋肉量の大幅な増加をもたらさないためにも推奨されます。
トレーニング計画
Bompa(2005) [1] は、強度の高い中枢神経系トレーニングの合間に48時間の回復を提唱しています。彼はまた、同じトレーニング日に同じトレーニングをさらに実施することを推奨しています。これは相乗作用によるものであり、また翌日に中枢神経系の回復に使えるよう時間を作るためでもあります。例えば、短距離走者は同じ日にスプリントスピードのワークアウトと同じ強度のプライオメトリクスを行うことができます。次のトレーニング日には、中枢神経系に負荷をかけないようにトレーニングを選択します。例えば、テンポラン(嫌気性システムに過度のストレスを与えない、中程度ペースのランニング)。過去24時間以内に実施されたトレーニングを考慮する必要があります。
結論
イベントやスポーツにおいてスピードとパワーが重要な要素である場合、コーチやアスリートはトレーニングプログラムの中で中枢神経系に特化したセッションを計画する必要があります。トレーニングの焦点は、量ではなく、エクササイズの実行の質(機敏性)でなければなりません。
関連記事
解剖学および生理学
1.BOMPA, T. (2005) Periodisation Training for sports. 2nd ed. Human Kinetics
2.ELORANTA, V. (2003) Influence of sports background on leg muscle coordination in vertical jumps. ElectromyogrClin Neurophysiol, 43(3), p. 141-156
3.SHEPHERD, J. (2008) Brain over brawn – CNS training for enhanced performance. Peak Performance, 261, p. 5-7
参照ページ
MACKENZIE, B. (2000) CNS Training [WWW] Available from: https://www.brianmac.co.uk/cns.htm [Accessed 27/3/2020]