🏃♂️ RAST(無酸素スプリントテスト)とは?
短距離スプリントで「最大パワー」や「疲労度(疲労指数)」を評価できる実践的なテストです。
RAST(Running-based Anaerobic Sprint Test)は、ランニングを使って短時間の高強度パフォーマンスを測定するもので、主に無酸素性パワーや疲労耐性の分析に活用されます。
必要な道具は「35メートル×6本の全力ダッシュ」と「ストップウォッチ」だけ。
その手軽さから、部活動やアスリート育成の現場、トレーニング施設など、さまざまな環境で導入されています。
また、自転車で行うWingate Test(ウィンゲートテスト)と目的は似ていますが、RASTはラン系競技の選手に特化しており、より実戦的な形で無酸素能力や疲労傾向を可視化できる点が特長です。
🎯 テストの目的
RASTの目的は、以下の4つの数値を算出し、アスリートのスプリントパフォーマンスを総合的に評価することです。
•最大パワー(最大瞬発力)
•最小パワー(疲労時の出力)
•平均パワー(安定した無酸素能力)
•疲労指数(Fatigue Index/パワーの落ち幅)
🛠 必要なもの
• 35m直線距離が確保できる場所(例:陸上トラック)
• コーン ×2
• ストップウォッチ ×2
• アシスタント ×2人
•体重計

🏃♂️ 実施方法(合計6本のスプリント)
1. アスリートの体重を記録
2. 10分間のウォームアップ
3. 直線35mを計測し、コーンで目印を設置
4. 以下のようにスプリントを6本繰り返す:
スプリント本数 |
実施内容 |
---|---|
① |
最大スピードで35mを走る(スタンディングスタート) |
② |
10秒間休憩したら、次のスプリントを開始 |
③〜⑥ |
合計6本、同じ流れで繰り返す |
それぞれのスプリントでかかった秒数を記録しておきます。
📊 評価方法と計算式
各コースの選手の体重とタイムを入力し、「計算 」ボタンを選択します。
各スプリントのパワー出力は以下の方程式を用いて求められます。
▶︎ パワーの計算式:
パワー(W)= 体重 × 距離² ÷ タイム³
※距離は35m、タイムは各スプリントでかかった秒数です。
📊 評価項目の解釈
項目 |
内容 |
---|---|
最大パワー |
6本の中で最も高い出力。パワー・スプリント力を表す |
最小パワー |
最も低い出力。疲労時のパフォーマンス維持力を示す |
平均パワー |
6本の平均出力。無酸素持久力や安定性の指標になる |
疲労指数(FI) |
(最大 – 最小パワー) ÷ 合計時間数値が低いほど疲れにくい身体と判断される |
🔍 数値例(体重76kgのアスリートの場合)
スプリント |
タイム(秒) |
パワー(W) |
---|---|---|
1本目 |
4.52 |
1008 |
2本目 |
4.75 |
869 |
3本目 |
4.92 |
782 |
4本目 |
5.21 |
658 |
5本目 |
5.46 |
572 |
6本目 |
5.62 |
524 |
•最大パワー:1008 W
•最小パワー:524 W
•平均パワー:736 W
•疲労指数:(1008 − 524) ÷ 30.48 = 約15.8 W/sec
✅ こんな人におすすめ(対象者)
•サッカー、ラグビー、バスケなどインターバル的運動が多い競技の選手
•スプリント能力や無酸素パワーを高めたいアスリート
•トレーニング効果の“見える化”をしたい方
📈 テストの活用ポイント
• 定期的に実施し、数値の推移を比較
→ トレーニングの効果や疲労の蓄積をチェック!
• 疲労指数(Fatigue Index)が高すぎる場合
→ 乳酸耐性トレーニングを取り入れてみましょう
🧪 疲労指数とは?
「6本のスプリントの中で、どれくらいパワーが落ちたか」を示す指標です。
この値が10以上の場合、乳酸耐性の強化が課題と考えられます。
✅ 改善に役立つトレーニング例:
・インターバルトレーニング
・乳酸除去能力を高めるドリル(アクティブリカバリーなど)
これらを取り入れることで、スプリント後半の粘りや疲労への耐性が向上します。
⚠️ 注意点・信頼性
•信頼性の高いテストではあるが、モチベーションや体調による影響も大きいため、再現性のある環境で実施することが大切です。
•Marcosら(2013)の研究によれば、RASTはサイクリストの評価には適さないとの指摘もあり、主に「ラン」に特化したテストとして活用されます。
✅ まとめ
•RASTは、スプリント能力 × 疲労耐性を同時に評価できる
•簡単な道具と場所で実施可能
• アスリートの短時間高強度パフォーマンスの指標になる
•継続的に行えば、トレーニング効果の“見える化”が可能!
参照
1.RAPER, N. and WHYTE, G (1997) Here’s a new running based test of anaerobic performance for which you need only a stopwatch and a calculator. Peak Performance, 96, p. 3-5
2.MARCOS, R. Q. et al. (2013) Validity of the RAST for evaluating anaerobic power performance as compared to Wingate test in cycling athletes. Journal of Physical Education, 19 (4), p.696-702.
関連文献
以下の参考資料は、このトピックに関する追加情報を提供しています。
・KEIR, D. A. et al. (2013) Evaluation of the running-based anaerobic sprint test as a measure of repeated sprint ability in collegiate-level soccer players. The Journal of Strength & Conditioning Research, 27 (6), p. 1671-1678
・VAN INGEN SCHENAU, G. J. et al. (1991) Can cycle power predict sprint running performance? European journal of applied physiology and occupational physiology, 63 (3-4), p. 255-260
・FALK, B. et al. (1996) A treadmill test of sprint running. Scandinavian journal of medicine & science in sports, 6 (5), p. 259-264
参照ページ
MACKENZIE, B. (1998) RAST [WWW] Available from: https://www.brianmac.co.uk/rast.htm [Accessed 8/4/2020]