プロ野球選手の「すごい」ウエイトトレーニングを覗き見! あなたの練習にも活かせるヒント
プロ野球選手の鍛え抜かれた体は、日々の厳しいトレーニングによって作られています。今回は、2025年の宮崎春季キャンプで撮影された選手のウエイトトレーニング動画を元に、彼らがどんな練習をしていて、それがなぜ野球に役立つのかを、ストレングスコーチの視点から分かりやすく解説します!
この動画には、ホークスの柳田悠岐選手や近藤健介選手をはじめ、たくさんの選手が登場し、それぞれの体と向き合っていました。特にピッチャーが行っていたトレーニングには、野球の動きに直結する大切な狙いが隠されていました。
なお、以下の解説はあくまで私個人の見解に基づくものであり、実際の選手の意図やチームの戦略とは異なる可能性がある点をご了承ください。
ピッチャーの特別なトレーニング:力強く、しなやかに!
ピッチャーの皆さんが取り組んでいたのは、ただ重いものを持ち上げるだけでなく、野球の動きを良くするための、ちょっと特別なトレーニングです。彼らの目標は、体を大きくすること(筋肥大)というより、ボールを速く投げるための「瞬発的な力(出力)」を高めること、そして、バランス良く効率的に体を使うための補助的な練習に力を入れているようです。
具体的にどんな練習をしていたか見てみましょう。
1. 地面からの力を爆発させる! Hex Bar Jump Squat (VBT付き!)
これは、六角形のヘックスバーという器具を使ったジャンプの練習です。普通のバーベルと違って体の中心で重さを持つので、腰への負担を減らしながら、ジャンプ、つまり地面を力強く蹴る力を鍛えられます。投球の際に地面からもらうパワーを、素早くボールに伝えるための練習と言えます。
さらに、このジャンプの時に「VBT(Velocity-Based Training:速度トレーニング)」という機械を使っていました。これは、バーベルが動くスピードをリアルタイムで測る機械です。なぜスピードを測るかというと、重さだけでなく「どれだけ速く動かせたか」が、野球で大切な「瞬発的な力」を知るための最も直接的な手がかりになるからです。今日の調子に合わせて最適な重さを見つけたり、「もっと速く!」を意識したりすることで、練習の効果を客観的に確認しながら高めることができるんです。

行われていたジャンプは、カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)という形式です。これは、一度軽くしゃがんでからすぐにジャンプする、予備的な下方向への動きを伴うジャンプです。
この予備的な動きにより、筋肉が引き伸ばされてから素早く縮む際に「筋反射」という体の仕組み(専門的にはストレッチ・ショートニングサイクルと呼ばれます)が使われます。筋反射とは、筋肉が急に伸ばされると、縮もうとする自然な反応のことです。CMJはこの筋反射を効果的に利用することで、筋肉そのものの力に加えて反射的な力を使い、より大きな出力を瞬間的に発揮する能力を高めます。これは、投球や打撃の爆発的なパワー発揮に非常に似た体の使い方です。
対照的に、しゃがんだ姿勢で一度静止してからジャンプする「ノンカウンタームーブメントジャンプ(NCMJ)」という方法もあります。こちらは筋反射を最小限に抑え、筋肉の「遊び(マッスルスラック)」を自力で素早く取り除いてから力を出す練習なので、「止まった状態から動き出す力(スタート筋力)」を鍛えるのに有効です。動画ではCMJがメインだったようですから、主に爆発的なパワーの最大化を狙っていたのでしょう。
野球の球速アップには、ジャンプ力が不可欠!以下の記事では、球速とジャンプ力の関係性を徹底解説。ジャンプが球速にどう影響するのか、具体的なトレーニングメニュー、そしてアスリートへの指導ポイントまで、球速アップに必要な情報が満載です。ラテラルジャンプの重要性や、レベルに応じたトレーニング方法も紹介しています。


マシンウエイトの活用:メリットとデメリット
杉山一樹投手が行っていたラットプルダウンや、スミスマシンでのワンハンドローイングなど、ウエイトトレーニングには「マシン」を使うものがあります。マシンウエイトの特徴は、体の動きの軌道がある程度決まっている、つまり体が固定される点です。これには以下のようなメリットとデメリットがあります。
マシンウエイトのメリット(体が固定されることで):
- 初心者でも安全に行いやすい: 動きの軌道がガイドされるため、正しいフォームを習得しやすく、怪我のリスクを減らせます。
- 特定の筋肉を狙いやすい: 他の筋肉の関与を抑え、鍛えたい筋肉に集中的に刺激を与えやすいです。
- 高重量を扱いやすい: バランスを取る必要がないため、フリーウエイト(ダンベルやバーベル)よりも重い重量に挑戦しやすい場合があります。
- 追い込みやすい: 疲れてきても軌道が安定しているため、安全に限界まで筋肉を追い込みやすいです。
マシンウエイトのデメリット(体が固定されることで):
- 実戦的な動きにつながりにくい場合がある: スポーツの動きは自由な関節や体の連動で行われるため、固定された軌道での練習は、そのまま動きの向上に直結しにくいことがあります。
- バランス能力や体幹の関与が少ない: 体を支えたりバランスを取ったりする、スポーツに重要な能力があまり鍛えられません。
- 体の連動性が養われにくい: 複数の関節や筋肉が協調して動く自然な連動性が鍛えられにくい傾向があります。
マシンウエイトは安全に特定の筋肉を強化するのに有効ですが、スポーツのパフォーマンス向上には、フリーウエイトや自体重、片側性のトレーニングなど、体のバランスや連動性を養う練習と組み合わせることが大切です。
上半身のトレーニング:引く力と「プッシュ&プル」の連動
投手陣は、全身を使うデッドリフトに加え、背中を鍛えるラットプルダウンやワンハンドローイングも行っています。これらの「引く力」は、投球動作におけるテイクバックや腕の振り出し、そして投げ終わった後の体の制御に重要です。
特にワンハンドローイングについて、私の見解として「野球において回旋の動きは、片側が押す力、もう片側が引く力で成り立っている」というということです。つまり、ダンベルを使ったワンハンドローイングをベンチに手をついて行う際に、支えている手でベンチを「押す」ことを意識することは、回旋運動における片側でのプッシュと片側でのプルの連動を体で覚えることにつながり、投球や打撃のような回旋を伴う動作の質を高める上で非常に有効な練習になり得ます。動画のトレーニング(Half-Kneeling Single-Arm Landmine Press・Half-Kneeling Single-Arm Lat Pulldown)では引っ張っていない方の手も動かしています。それは上記で説明したプッシュ&プルの動作を入れていることが目的ではないかと予想しています。なのでワンハンドローイングもスミスマシンで行うのではなく、ダンベルでベンチ台をプッシュしながらダンベルをプルした方がより実践に活用できる動作になると思う。ラットプルダウンのような垂直方向へのプルと組み合わせることで、投球に必要な「引く」力を多方向から鍛えられます。
では、野球において、この「回旋」という動きは、一体どれほど重要なのでしょうか?
さらに、安定性や下半身との連動性をより意識するのであれば、Single Leg Single Arm Dumbbell Row(片足立ち片手ダンベルローイング)を取り入れるのも非常に有効だと考えられます。片足でバランスを取りながらローイングを行うことで、体幹の安定性がより強く求められ、下半身との連動性もトレーニングすることができます。
ローイング動作に限らず、トレーニングに様々なバリエーションを持たせることは、異なる角度から筋肉を刺激し、偏りのない機能的な体力向上に繋がるため、非常に重要です。
肩のケアと怪我予防に:フェイスプル
投手陣のトレーニングには、肩の健康を維持し、怪我を予防するための重要なエクササイズも含まれています。その一つがフェイスプルです。
フェイスプルは、チューブやケーブルを使って、グリップを顔の近くまで引きつける動作です。この種目は特に、
- 投球の減速期における負担軽減: 投球では、ボールを投げ終えた後に腕を勢いよく止める「減速期」に、肩関節、特に後ろ側の筋肉(三角筋後部)に大きな負担がかかります。フェイスプルは、この三角筋後部や肩甲骨の周りの筋肉を強化することで、減速期にかかるストレスを減らし、肩の怪我(インピンジメント症候群など)の予防につながると考えられています。
- 肩のインナーマッスルと姿勢の改善: 肩甲骨をしっかりと寄せる動きを伴うため、肩の関節を安定させる小さな筋肉(ローテーターカフ)の機能向上にも役立ちます。また、普段猫背になりがちな人にとっては、良い姿勢を保つために重要な肩甲骨周りの筋肉を活性化する効果も期待できます。
フェイスプルを行う際は、重い重量で無理に行うのではなく、軽い重量でフォームを大切に、狙った筋肉(特に肩の後ろ側)に効いているかを意識することが重要です。立つ姿勢や片膝立ちで行うことで、体幹部を意識しながら行うこともできます。
片側性・機能的な補助トレーニング:体幹と体の連動
さらに投手陣は、Half-Kneeling Single-Arm Landmine PressとHalf-Kneeling Single-Arm Lat Pulldownといった、片膝立ちで行う片側性のトレーニングも積極的に取り入れています。
野球の投球動作は左右非対称で、体の片側(投げる腕側)と反対側が異なる働きをします。これらの片側性の練習は、体幹をしっかり安定させた状態で片側ずつ力強く動かす能力を養い、投球における体の軸のブレをなくしたり、左右のバランスを整えたりするのに役立ちます。
Landmine Pressは投球方向へのプレス動作、Lat Pulldownは引き付け動作に近い動きを片側で行うことで、より実践的な体の使い方を覚える練習と言えます。片側での動きに集中することで、体の連動性や、ご自身の見解にある「プッシュとプル」の意識を高めることにもつながるでしょう。
トレーニングの効果を最大限に引き出し、実際の試合で発揮するためには、「エコロジカルアプローチ」の考え方が重要です。
以下のブログでは、トレーニングを競技パフォーマンスに効果的に繋げるための方法を詳しく解説しています。

全体的なトレーニング:懸垂の挑戦
動画全体を通して、選手たちは懸垂も行っていました。回数はなんと50回! 重さをつける環境ではなかったのかもしれませんが、たくさん行うことで、背中や腕の筋肉の持久力、そして肩甲骨を大きくスムーズに動かす能力を高めているのでしょう。懸垂は自分の体をコントロールする能力も養う、野球選手にとって非常に基本的ながら重要なトレーニングです。
あなたのトレーニングに活かすヒント
プロ野球選手のトレーニングは、最高レベルのパフォーマンスを目指すための専門的なものです。そのままのメニューを真似するのではなく、「なぜその練習をするのか?」という考え方を参考にすることが大切です。
- パワーアップしたいなら: 重さだけでなく、「速く動かす」ことを意識する(VBTの考え方)。ジャンプなど地面からの反発を使う練習を取り入れる(CMJの考え方)。
- 体のキレや連動性を高めたいなら: 片側ずつのトレーニングや、体幹を意識した練習を取り入れる。ご自身の見解にあるように、回旋運動における「プッシュとプル」の感覚を意識してみる。
- 怪我を予防したいなら: 背中や肩の後ろ側など、投球や打撃の際にブレーキ役となる筋肉や、肩甲骨周りの動きを良くする練習(フェイスプルや懸垂など)もバランス良く行う。
ご自身の体やレベルに合ったトレーニングは、必ず専門のトレーナーや指導者に相談して決めるようにしましょう。プロの選手たちの真剣な取り組みから学び、あなたの野球人生に活かしていってください!
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